万歩計
僕の携帯電話はかなり新しいモデルで、万歩計がついている。機器本体の揺れなんかを検知するらしい。
僕はあまり出歩く方ではないのだが、せっかくついている機能なので利用する。
さて、今日はどれぐらい歩いただろう、なんて思ったけれど、今日は携帯電話を持って外には出ていない。せいぜい家の中で部屋の移動をしたくらいだ。
僕は何の気なしに携帯電話を操作する。万歩計のところを見ると、おかしい。出歩いていないはずなのに、今日だけで5000歩も歩いたことになっている。
僕は気づかないうちに家の中で5000歩も歩いたのだろうか。でも、うちの家の廊下はそこまで長くないし、階段だって何百段あるわけでもない。
しかし、万歩計の数値が高いとなぜだか嬉しくなるもので、僕は訳がよく分からないまま何か満足していた。
僕は満足感に浸りつつ、「なかなかいいじゃない、万歩計」なんて思っていた。
だが僕は真実に気づいてしまったのだ。
それはある日の夕食時だった。夕食前に時間を確認しようと思って携帯電話を見た。その日もあまり歩いていないにもかかわらず、万歩計の数値は3000歩ぐらいになっていた。
僕はいつものことなので気にせず食事をした。
そして食事が終わったあと、ふと携帯電話に目を通すとなぜか歩数が300ぐらい増えている。
どう考えてもおかしい。家の中での移動すらしていない僕が300歩も歩いたことになっている。
これは一体どうしたことだろう。僕は、携帯電話が壊れているんじゃないだろうかという不安を感じた。
夕食中のことを思い出してみるが、300歩も歩いたなんてことは確実にない。一度だけお茶を汲みにキッチンへ行ったが、キッチンへ行くのに150歩も歩いていない。せいぜい10歩だ。
僕は拭いきれない疑念と、得体の知れない不安を抱えながら自室に戻った。
とりあえず余り気にしないようにしよう、と思って僕はパソコンをつけた。
その時、僕は気づいてしまったのだ。
歩いていないはずの僕を歩かせた謎の正体に気づいてしまった。
貧乏ゆすりですが何か。